備え無きを攻めその不意に出ず

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現代訳
 
 敵が備えていないところを攻撃し、敵の不意を突くようにする。

 これが戦争に勝つ方法である。

 しかし、戦いの前に想定することができないものである。


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相手の不意を突いて、物事を有利に運ぶ


*意外なところをほめ、相手が心を開くきっかけとする。

 営業で仕事を取る、女性を口説く…。これらの成否のカギは、「相手の心をどこまでつかめるか?」にかかっています。

 人は誰でも、「他人に認められたい」という欲求を持っています。自分を認められる人には親近感を抱くものです。

 もっとも簡単でわかりやすい人に認められる行為は、人から「ほめられる」ことです。この心理は突けば、人間関係を親密にすることができます。ほめ言葉は相手の関心を買うことになり、ほめてくれた人間に行為を抱き、心を開くキッカケともなります。

 お世辞もしかりです。しかしながら、あからさまなお世辞は、「オレを馬鹿にしているのか」と相手に受け取られかねません。その使い方によっては逆効果になるケースもあるので、十分に注意しましょう。



*本人も気づいていないような点をほめる。

 下心があってのほめ言葉や、誰でも言うような当たり前のほめ言葉も効果がありません。

 成績優秀な人に向かって「いやぁ、素晴らしい成績ですね」と言っても、言われた側からしてみれば、誰からもいつも言われていることで「言われて当然」といった意識があり、嬉しくも何ともありません。

 それより、本人も気づいていないような“意外な点”を見つけてほめるのです。

 孫子の言うところの「その備え無きを攻め、その不意に出ず」です。

 本人も、


●「そんな見方があったのか……」

●「この人は、こんなところまで自分を見ていてくれていたのか!」

 と嬉しくなるものです。


*第三者を介してほめるの効果絶大

 ただし、意外さを求めるあまり、事実とあまりにかけ離れてはいけません。「この、お調子者!」という悪印象に与えかねないからです。

 例えば、“意表を突く”方法としては、本人に直接ほめ言葉をかけるのではなく、他人の口を介してほめるというやり方があります。

 面と向かってほめては嫌味に受け取られたり「下心があるのでは?」と疑いを持たれたりするものですが、第三者の口を介してほめれば、ほめ言葉はストレートに伝わります。

 「あの人がこう言って、あなたのことをとてもほめていたよ」と伝わればしめたものです。

 相手は「本当にあのヒトは、自分のこと認めてくれているんだ」と嬉しさもひとしおで、素直に受け取ってもらえます。